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プレゼントの行方

 

 

 

 とあるアパートの二階、数人の男女が一つのロウソクを囲うように輪になって座っている。

 電気は点いておらず、ロウソクの炎で部屋は怪しく揺らめいている。

 その中の一人の男…岡崎朋也がたちあがり、叫びだした。

朋也「ふははははは、諸君、今日は良く集まってくれた…」

  …なにやらノリノリである。

朋也「今日集まってもらったのは他でもない…あの憎き智代…を」

  急にどもり、だんだん声が小さくなっていく…。

朋也「智代…を……だな、えっと…その…」

朋也「うわああああああああああ!!!!!!!!!」

  いきなり頭を抑えて朋也が叫びだした。

朋也「できない!!俺には…俺には智代を侮辱するなんてこと…」

朋也「智代は頭もいい…身体能力も並外れだ…生まれ持ってのカリスマ性もある…
   それに比べて…俺は……俺はぁ!!」

朋也「うわあああああああああああ!!!!俺の馬鹿やろおお!!智代に謝れ!!むしろ死ね!!俺!」


  朋也が延々と叫び続けているのにさすがに痺れを切らしたのか、女…藤林杏が立ち上がり、電気をつけた。
 

 パチン、という音を立て、ゆっくり部屋が明るくなっていく。

  全員の顔が判別できるぐらいになった時、杏は朋也に言った。

杏 「あんたねぇ…そんなことをあたしたちに聞かせにきたの!?」

朋也「…えっ?……はっ!?」

  そこで朋也も人がいたことを思い出したらしく、姿勢を正した。

春原「あの…とりあえずこの縄解いてくれませんか?」

朋也「あ、春原いたんだ?」

春原「あんたねぇ!?人をいきなり呼び出して、縄でぐるぐる巻きにしたのは誰だよ!?」

  そう叫ぶ春原は目隠しをされ、手首に足首、体までも縄でぐるぐる巻きにされている…すこし…いやかなり不気味な光景だ。

朋也「似合ってるぞー」

春原「こんなの似合ってても嬉しいはずないだろ!?」

朋也「うるせえな!話を始められないだろうが!」

春原「くぅう!!何であんたがキレてんだよ!?最近僕の扱い酷すぎだろ!?」

朋也「いや、お前結構重要な役だから」

春原「なに!?この格好で何させられるの!?」

杏 「陽平…あんた…」

  急に杏が真剣な顔で話し始める。

杏 「…似合ってるわね」

春原「お、お願いだから真剣に言わないでください!!」
 

  春原が悲痛な叫び声をあげる…男のプライドだろうか?

杏 「ああ、もううるさい!渚が引いてるでしょ!」

  杏が指差した先には、部屋の隅でぼーっとこっちを見ている渚がいた。

渚 「………………」 

 …しかし自分が指差されたのも気づかずぼーっとこっちを見続けている。

杏 「…渚?」

  不振に思った杏が渚に声をかけた。

渚 「………春原さん…」

  しかし声をかけられたのにも気づかずに、渚は春原に声をかけた。

春原「え、なに?もしかして愛の告白?」

渚 「その格好………」

  目隠しをしたままでの春原のボケにも突っ込むことなく、話を進める。 

  そして満面の笑顔で…

渚 「似合ってますよーーーーー!」

  …二ッコーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー…

  …なんつうかもうニッコーーーーーーーーーーーーーーーー。

朋也「はぁ!?」

杏 「はぁ!?」

  部屋に朋也と杏のハモリ声が響いた…。

  しばらく誰も動かなかったが、徐々に皆が正気を取り戻す。

杏 「な…渚?」

春原「…ど、どうしたの渚ちゃん?」

  杏と…春原さえもが不振に思い、声をかけた。

朋也「……ん?」

  朋也が、渚の持っている物に気がついた。

朋也「…古川…なんだそれは?」

  朋也の指差したもの…それを渚は前に突き出して答える。

  渚の持っているもの…パン…なのだろうか?

  パンだとしても…これは食べれるのだろうか?

  まず間違いなく100人中100人に聞いても、これは失敗作だ…っと言うだろう。  

  なにせ真っ黒なのだ…いや…メタルか?

  なぜかパンが鈍く黒い光を放っている。

渚 「これですか?…これはですねぇ………ホモパンです」

朋也「…………ホ?」

春原「…………モ?」

杏 「…………パ?」

渚 「…………ン!」

  …なんかすごい。

朋也「ってそんな物があるのかあああああああああああああ!!!!????」

渚 「はぁ…はぁ…春原さん…岡崎さん…素敵です」

春原「解いてええええええええ!!!!!お願いだから解いてくれえええええええ!!!!」

杏 「渚!!落ち着いて!!そのパン捨てて!!」

朋也「お、押すな古川…って近いって!!!春原が近いいいいいいいい!!!!」

杏 「ちょ!?なにしてんの渚ああああああ!!!」

渚 「さぁ…岡崎さん…春原さんと誓いの…」

朋也「何を誓わせるきだああああああああ!!!うぎゃあああ!!春原の顔がこれまでにないぐらいドアップにいいいいいいい!!!???」

春原「ぎゃああああああああああ!!!!!!!近い近い近い近い近いってええ!!!!!」

杏 「うわ…キモ…」

春原「んなこと言ってないで助けろ!!」

朋也「んなこと言ってないで助けろ!!」

渚 「さぁ岡崎さん…春原さんと一緒に極楽浄土に………」

朋也「いやそれ死んでるから!!!わかってる!?」

春原「ツッコんでないで縄を解けええええええええ!!!!」

杏 「あ、あははははは……私ちょっと出てるね」

朋也「見捨てないでくれええええええええええええ!!!!」

春原「お願いしますからああああああ!!!!!!!!!

渚 「はぁ…はぁ…………良い」

朋也「何がだよ!?」

春原「………岡崎」

朋也「なんだよ!?こんな時に!?ってうわあああああああ!!!」

春原「俺……ずっと前から…岡崎のことが…!!」

朋也「………はぁ!?ちょ…ちょっと待て!!何を言おうと…ってそれ…?」

渚 「ホモパンですねぇ…」

朋也「なに食ってんだよお前えええええ!!!!!!!!!!!」

春原「…なぁ…僕の愛を……受け取ってくれるか?」 

渚 「岡崎さん!!とりあえずやっちゃえやっちゃえ…です!!」

朋也「杏ーーーー!!!!!戻ってきてくれええええええええ!!!!!!」

渚 「さあ岡崎さんもこのパンを…」

朋也「誰が食うか!!!!!!」

春原「さあ僕の愛を…」

朋也「死ねぇぇぇぇええ!!」

  バキィ!!!

春原「ぎゃあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

  ……………

  ………

  …

 

 

 

 

 

 

朋也「…はぁ…はぁ…なんで俺がこんな目に」

  俺は動かなくなった春原を見下ろしながら呟いた。

春原「……………」

杏 「渚ー?おーい渚ー」

  杏はさっきから放心状態の渚に話しかけている。

朋也「……………はぁ」

  これじゃ先が思いやられるな…

  …ったく、今日は大事な日だってのに。

  こんなんでうまくいくのかねぇ?

朋也「…………………」

  俺はもう一度周りを見渡す。

杏 「大丈夫だって!あんたはなんにもしてないから」

  渚を励ます杏…。

春原「…………………」

  口から血を流したまま動かない春原…。

朋也「……………はぁ」

  俺はまたため息を吐いた。

  …本当にうまくいくのかねぇ?

朋也「ま、やるしかないか…」

  こいつらが正気に戻ったら、作戦を発表するかな。

  ………………

  …………

  …

 

 

 

 

 

 

 

智代「ただいまー…?」

  …来たぞ…智代だ…。

智代「朋也?いないのか?」

  おい…杏…古川…準備はいいな?

智代「…おかしいな……今日は夜までには帰ってくると…」

  …そう…そうだ…そこに運べ。

  …………おい杏…もう少し丁寧に運べ…じゃないと落とすぞ?

  お、おい!…春原…起きてないか?

智代「…ん?」

  こ、こら春原…暴れるな!

  お、おい…そんなに暴れると…お前を運んでいる杏に手が…。

  ……………あ…。

  ………古川…逃げるぞ。

  ………………。

  …なんでじゃない!早く…。

杏 「ど………」

  きょ、杏…落ち着け!場所を考えろ!

  だから…ああ……。

杏 「どこさわってんのよーーー!!!!」

春原「うぎゃあああああああああああああああ!!!」

  バキッ!!

  いやな音と共に底が…抜けた。

朋也「うわ!?」

渚 「きゃあ!!」

春原「うわあああああぁぁぁぁぁ…」

杏 「ちょ…きゃあああ!」

  ドスン!   

  たく…いてえな…って! 

智代「………………」

朋也「………………」

春原「………………」

杏 「………………」

渚 「………………」

智代「…何をしているんだ?朋也?」

  智代さん…そんな哀れみの目で見ないでください…。

朋也「…え、えーとですね…」

  智代さん…だからそんな悲しそうな目で見ないでください…。

智代「…なんで天井から人が落ちてくるんだ?これはどうゆう状況なんだ?」

  ………こ、こうなったら…

朋也「…………きょ…」

智代「きょ?」

朋也「杏!!行けええええええええ!!!」

  玉砕あるのみだ!!

杏 「え…あ、…………とりゃ!!」

春原「え、なに!?………うわああああああぁぁぁ!!!」

  俺の掛け声に少し送れて反応した杏が、縄でぐるぐる巻きの春原を思いっきり蹴り上げた。

智代「ふん!」

  バキッ!

  ごろごろごろごろ…ガツンッ!!

  ………えー…っと。

  今の効果音は、飛んできた春原を智代がけり返して…そのまま穴が開いた天井にシュート。

  んで天井裏を転がっていった春原は俺たちが入ってきた窓から落ちてコンクリートに激突…。

朋也「………南無阿弥陀仏…」

智代「…ふー…お前たちは何がしたいんだ?」

  もはや春原のことはどうでもいいのか…それとも春原の異常な生命力を知ってのことか…

  智代は今蹴り飛ばした春原の事などどうでもいいようだ。

杏 「…えーと…これは失敗?」

渚 「…そう…みたいですね」

杏 「…………………」

渚 「…………………」

杏 「おじゃましましたー」

渚 「おじゃましましたー」

  そうゆうやいなや、杏と渚はとっとと退散してしまった。

智代「…あいつらは何をしにきたんだ?」

朋也「……さぁ?」

  ここまできたら作戦は中止だな…。

 

 

 

 

智代「で、何であんなことをしたんだ?」

朋也「えっとですね…」

  今俺は智代の目の前で正座させられている…いや…しなければいけないような気がして自分から正座している。

  ……それにしても最近俺…どんどん智代の尻にひかれてないか?

 

  …ん?………尻?

朋也「……………………」

朋也「………………ぶ!」

  や、やばい…智代の尻にひかれてる所(物理的な意味で)を想像して…鼻血が…。

智代「だ、大丈夫か朋也!…ほ、ほらティッシュだ」

朋也「あ、ありがと」

  って何考えて鼻血出してんだ!!俺は!!

  落ち着け俺…落ち着くんだ。

  そして俺は鼻にティッシュを詰めたまま話しだした。

朋也「今日はさ…智代の誕生日だろ?」

智代「…そうだ、彼女の誕生日だぞ?嬉しいだろ?いや、嬉しいはずだ」

  智代が嬉しそうな声をだす…口にはださないが、多分自分の誕生日を覚えていてもらったのが嬉しいのだろう。

朋也「………………」

  そんな智代を素直に愛しいと感じてしまった。

智代「…朋也?」

朋也「………ん?あ…なんだ?」

  おっと、つい黙ってしまった…。

智代「う、嬉しくなかったか?」

  ぐはぁあああああああ!!!

朋也「………くっ…はぁ…はぁ…ぶうう!!」

智代「と、朋也!また鼻血が!!」

  …くっ…きたぜ智代の斜め45度視線!!あれを食らって鼻血をださない奴はいない!!

  ……それにしても俺…最近どんどん変態じみてきてないか?

朋也「う、うれしいぞ智代!彼女の誕生日だからな!!」

智代「そ、そうか…とりあえず鼻血を止めてから話せ…畳が真っ赤になってるぞ…」

  うお!!やばい!!俺の家が赤い部屋になってしまう!!

朋也「ん………よし」 

  うん、これで安心。

  鼻にティッシュを詰めたまま一人で頷く。

朋也「でだ、今日は彼女の誕生日だから贈り物を…と思って」

智代「本当か!?」

  智代がズイっと迫ってきた。

朋也「ほ、本当ですが何か?」

智代「そ…そうか……と、朋也は私の彼氏だからな…うん」

智代「…………だがプレゼントとあいつらは何か関係があるのか?」

朋也「ないです」

  速攻で言い切ってやった。

智代「そ、そうか…ならいいんだが」

朋也「まぁいいじゃないか!!とりあえず俺のプレゼントを受け取ってくれよ!!」

智代「そ、そうだな……だがまだ心の準備が」

  …うむ……智代が言ったとおり俺もまだ心の準備が…。 

  …ここは一つなにか仕掛けてやろう。

朋也「えーとですね、プレゼントはキスです!!」

智代「……それは朋也がしたいんじゃないのか?」

朋也「そんなことはな……いやしたいけど……智代はしたくないのかぁ!?」

  ここでぐっと押してみる。

智代「い、いや…したくないわけじゃ…どっちかとゆうと……したいが」 

朋也「さ、冗談はさておき…」

智代「冗談だったのか!?」

朋也「本当のプレゼントはですね…」

智代「…そうか…朋也は私をそうやっていじめるんだな……せっかくの誕生日だとゆうのに…」

  うん!このすねてる時の智代はかわいいな。

朋也「獣のような子作りを…」

智代「うわーーー!!!聞こえない聞こえない!!」

朋也「…っとゆう題名のDVD!!」

  ぱっとさっきこのためだけに借りてきた……めっちゃ恥ずかしかったが……いわゆるAVを智代に持たせる。

智代「………………」

朋也「ニコニコ…」

智代「…………う…」

朋也「う?」

智代「うわああああん!!!」

  うお!?泣いてしまわれた!!

智代「楽しいか!!私をいじめて楽しいのか!!」

朋也「智代!!愛してるぜ!!」

智代「わ、私のほうが愛してるぞ!!」

  おお、泣き止んだ!!しかもなんか対抗してきた!!

  この…!負けてたまるか!!

朋也「俺は智代のことを好きだといいながらこの県を一周できるほど愛してるぞ!!」

智代「ほ、ほんとか!?」

朋也「いや嘘だけど」

智代「………………」

朋也「………………」

智代「朋也、今日の晩御飯抜き」

朋也「ぎゃああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」

  そ、それだけは阻止しなくては!!

朋也「分かった!!俺は今からこの町を智代が好きだといいながら走り回る!!」

智代「い、いや…それはさすがに……はずかしいのだが…」

朋也「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ………」

  バタンッ………

智代「と、朋也!!じょ、冗談だ!!だから止まれ!!」

  智代が扉を開けて走っていった朋也を探す。

朋也「そっか、じゃあ止めるか。」

智代「………………」

  ドアの後ろから出てきた俺を、智代が無言で見つめてきた…。

朋也「さぁ、寒いし中に入ろうぜ、風邪ひくぞ?」

智代「………………」

  なぜか無言で智代が背を向ける。

朋也「どうした?智代?」

智代「…………わ…」

  そしていきなり走り出した。

智代「私は朋也が…大好きだああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」

  叫んだ……大声で……かなり遠くの山にはね返って声が何重にも聞こえる。

  好きだああああああああ………好きだああああああ………きだあああぁぁぁ……

  って!のんびり智代のエコーを聞いている場合じゃない!!

朋也「………やべぇ…智代が狂った。」

  さすがにいじめすぎたようだ。

朋也「ちょ、悪い!!俺が悪かったって!!」

  止めようにも智代の姿はすでに小さくなってきている…なんてスピードだよ!?

智代「私は朋也を愛してるーーーーーーーー!!!!!!!!!」

  …あぁ……明日には変な噂が立ってんだろうな。

  こうなったらやけくそだ!!

朋也「俺は智代が大好きだあああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」

  そして俺も走り出した……この叫び声は5時間ほど鳴り止まなかった…らしい。

  ……………

  ………

  …

 

 

 

朋也「智代!!誕生日おめでとーーー!!!」

  ここで普通ならクラッカーを鳴らすところだが…それじゃおもしろくないので鼻からピーナッツを飛ばしておく。

  ふん!……ピュン……ふん!……ピュン……。

朋也「……なんか俺…変人みたいじゃね?」

智代「私は変人でもかまわないぞ」

  ニコニコ…

朋也「…さ、さぁ……ケーキがちょうど売り切れだったから代わりに買ってきたジャガリコだ!!」

智代「ありがとう朋也!!」

  ポリポリ…

朋也「…え、えっと……すまん、本当はケーキ買えたんだ」

  ドンと、この日のために買っておいたどでかいケーキを出す。

智代「そうだったのか!もう、朋也は嘘つきだな」

朋也「…………………」

智代「…………………」

朋也「あの…すいませんがそろそろ機嫌直してくれませんか?」

智代「何がだ朋也?私はいつもどおりだぞ?」

朋也「……………目が怖いんですけど?」

  智代の目はいままで見たことないぐらい濁っていた…。

  …こ、こうなったら!

朋也「とおおおおおお!!!!」

  そう、古来よりお姫様の目を覚ますのは王子様のキスと決まっている!!

  ならば俺の愛のキスで智代の目を覚まして!!

智代「………ん…」

朋也「……………」

  ………あれ?まじであたっちゃったよ?

  智代ならこれぐらい避けれるはずなんだが…って!!

朋也「酒くさ!!」

  うおーーー!!なんだこれは!!ここまでの量のアルコールを人間が取ることができるとは…。

朋也「と、智代……お前まだ酒飲めなかっただろ!!」

智代「お酒?……あぁ……さっきおでん屋さんが走ってる私を呼び止めてくれたんだ…」

  おでん親父がぁあああ!!!!未成年に酒の飲ましてんじゃねぇよ!!!

智代「なあ………朋也ぁ…」

  智代がこれまで聞いたこともないような…いや何回か聞いたことがあるかもしれないが…甘えた声をだして俺に擦り寄ってきた。

朋也「ちょ…待て智代!お前酔ってるからな!」

智代「何をいってるんだ…私はいつもどおりだぞ?」

  い、いやいやいや…酔ってますから智代さん…。

智代「…朋也ぁ……」

  智代がまた甘えた声をだして俺にキスを求めてきた。

  …やっちゃう?

  やっちゃえやっちゃえ!!

朋也「って駄目だよ俺の馬鹿!!」

  あ、危ねぇ危ねぇ…あやうく流させるところだったぜ…。

  とりあえず水を…。

智代「とーもや…」

朋也「ん…んん!!」

  ………あー…やわらけぇなぁ………………

  …………じゃない!!

智代「……朋也の唇は甘いなぁ…」

朋也「と…智代……ちょっと待ってってくれよ!」

  そういって俺は台所に逃げるように退散した。

 

朋也「ゴク……ゴク……ゴク……ぷは」

  とりあえず水をのんで気分を落ち着ける。

朋也「完全に酔ってるな…智代」

  ここで『やっちゃえ』の声に従いたいところだが…いや別に俺が従いたいわけじゃないぞ?

  なんとゆうか…俗に言う俺の『a.son』が…。

  ………と、とにかく酔っている智代をここでやっちゃえば……俺の目標が達成できなくなる…。

  それだけは阻止せねば。

朋也「ふぅーー…はぁーー…よし!!行くか!!」

  俺は元気よく台所を飛び出した。

 ……のだが!!

智代「あ、遅かったな朋也」

朋也「と、智代さん何をしていらっしゃるのですか!!?」

  うわああああ!!!!、いぎゃああああああ!!!

  は、鼻血が………ぬおおおおおおおおおお!!!!

  俺の『a,son』があああ!!!

智代「…このケーキのことか?」

  い、言ってしまっていいのか?この状況を俺だけのものにしてしまったほうがいいんじゃないか!?

  ………はっ!あやうく我を忘れるところだった…。

  せ、説明するとだ…と…智代が…その…人体ケーキ?みたいな…?

智代「これは朋也が前やってみたいと言っていたことじゃないか」

朋也「そ、そんなこと俺言ったっけ?」

  お、俺はそこまでド変態だったのか…。

  …まずい…この状況は非常にまずい…。

朋也「と、智代おおおおおおお!!!水だああああああ!!!」

  ああああああ!もうやけだ!!水をぶっかけちまえ!!!

智代「あ!!」

  ばっしゃああぁぁぁぁ………

  ばっしゃあぁぁぁ………

  しゃあぁ………

  …

 

 

智代「………私は……ブツブツ……」

朋也「き、気にするなよ……酔ってたんだからさ!」

  結論、水をかけたらなぜか速攻で直りました…。

智代「………………をした?」

朋也「えっ?何て言った?」

  あまりに声が小さすぎて聞こえなかった。

智代「朋也………私は……なにをした?」

朋也「え、えーーっとだな………女体盛り?」

智代「うわあああああああああ!!!!!」

  いい言葉が思いつかなかったので直球で勝負してみたが……逆効果だったみたいだ。

智代「私は……まさか淫乱なのか?」

朋也「ちょ!?………女の子がそんな言葉使っちゃいけません!!」

  …あぁ……なんか俺、智代の事になるとキャラが安定しないな…。

智代「だって…だって……あんなんこと………う、ううぅぅぅぅ………」

  うわっ!泣き出しちまった!!……まあプライドの高い智代があんなことしてしまった日には死にたくなるかもしれんが。

朋也「お前は淫乱なんかじゃない!!」

  だから俺は励まそうと声をかけた。

智代「………本当か?」

朋也「ああ!お前は変態だ!!」

智代「わ、私は変態だったのか!?」

  …あれ?かける言葉を間違えたかな?

智代「わ、私は…変態だったのか…」

  うわ、なんか真に受けちゃった。

  今の智代ならなんでも信じてしまいそうだな…。

朋也「智代は変態じゃない…そして俺を愛している!」

智代「私は変態じゃない…そして朋也を………って何言わせようとしてるんだ!!」

  …ちっ

朋也「智代は俺の事が嫌いなのか?俺は智代のこと愛してるぞ?」

智代「ちょ……朋也!!いきなりそんなことを言われたら恥ずかしいじゃないか!」

  お、だんだん智代が元の調子に戻ってきたぞ…。

朋也「智代は…俺を愛していないのか?」

智代「す…好きだぞ朋也」

  うん、上出来だ。

朋也「とりあえず誕生日パーティー始めようぜ」

智代「で、でも…ケーキはもうないぞ?」

朋也「俺と智代がいればそれだけでパーティーみたいなもんだろ?」

  そうゆうと智代がクスッと笑った。

智代「いつも一緒にいるじゃないか」

朋也「そうだな、じゃあいつもパーティーだ」

智代「そうだな………朋也」

朋也「何だ?」

智代「これからも…ずっとそばにいてくれ」

朋也「………あぁ」

  そう言うと、俺たちはどちらともなく近寄りキスをした。

 

 

 

朋也「…………………」

  智代の誕生日パーティーを終え、智代が寝しずまった深夜…俺は一つの指輪を見つめていた。

朋也「…あーあ……結局渡せなかったか…」

  本当はこの指輪を渡すためのパーティーだったんだがな…。

  春原たちを呼んだのは俺の心を落ち着かせるためだ…。

  春原たちには指輪のことは言っていない、ただ智代をこの誕生日に怖がらせてやろう…と言ってあっただけだ。

  …ったく、電気を点けた瞬間に春原を落とすつもりだったんだがな…。

智代「…………んぅ…」

  横を見ると智代の寝顔がすぐ近くにあった。

  …なんの夢をみてるやら……。

朋也「……………ま、いいか。」

  もう少し…この曖昧な彼氏、彼女の関係を続けてもいいかもしれない…そう思った。

  それに…これからも、この指輪を渡した後も、俺たちは支えあって生きていくんだからな。

朋也「…俺も寝るか…」

  ………智代と一緒に夢を見れる………それだけでもいいじゃないか。

智代「…………ん…朋也」

朋也「………………智代」

  俺は智代の名前を呼んだ後…眠りに落ちていった。

  …これを渡すのは俺の誕生日にでもしようかな。
 

 

 

 

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